《MUMEI》
転校生って
教室に戻るとすでに先生がいた。英語の授業は担任が担当教員だった。
「遅いぞ〜、寺田、沢村。早く席着け。」
「すいませぇん。」
二人声を揃えて言うと、言われた通りそそくさと席に着いた。
「え〜今日は授業の前に転校生を紹介する。」

その瞬間、教室がどっと揺れた。無理もない。こんな事初めてなのだから。
「せんせぇ、女の子ですかぁ?」
一人の男子生徒が立ち上がりざま、騒ぎに負けない位の大声で聞いた。
寺田だった。
他の生徒もそれが気になっていたのか、一斉に先生に注目した。       
俺は男でも女でもどっちでもいい。関係ないし。

「それは紹介したら判るだろ?」
やっと静かになった教室に先生は転校生を招き入れた。
―ガラ…―

その瞬間、男子はうなだれ、代わりに女子は黄色い声をあげた。
「はじめまして。竜崎真之助です。」

ハハッ。真之助って…今時古風な名前だな。

俺は窓の外に向けていた目線をそいつにやった。

「あ!お前っ!」

しまった。思わずでかい声出してしまった…

「やぁ、さっきはどうも」竜崎は満面の笑みで俺に手を振ってきた。

「きゃ〜かわいー!」

その仕草に女子達は騒ぎ立てた。
「はい、静かに!竜崎は沢村と知り合いか?」
「はい。」

ちょい待ち!知り合いじゃねぇだろ、おい!

「そうか。じゃあちょうど沢村の隣空いてる事だし…沢村、竜崎にいろいろ教えてやれ。」

え?俺の隣なの?マジかよ…

「よろしく。沢村くん。」「…どうも。」

ニッコリ笑う竜崎に、俺はあからさまに迷惑さを込めて返事をした。

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