《MUMEI》

あの日、僕達が出会って居なかったら。

今頃、僕はまだ──血を漁って居たのでしょうか。

『本当‥?』

『はい。御命令は何でも承ります。その代わり──‥』

『その代わり‥?』

『僕と契約を』

『契約‥?』

『はい』

『どんな‥?』

『御命令を聞く代わりに──報酬を頂きたいのです』

あの契約が結ばれて居なくても、もしかしたら僕はアンリ様の執事になっていたかも知れません。

僕にとってアンリ様は──大切な、愛しい御方。

だからこそ、御側に居たいと、そう願うのでしょう──。

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