《MUMEI》

「ピー!!」


タイムアウトが明け、


試合が始まる。


「ん。」


(ユキヒロを代えてきたか。


まぁ当然だね。


けど代わりが千秋…


ふ〜ん…


千秋か。


一見無茶な人選だけど、


使い道もある。


それを仕掛けてくるかどうかだね。)








猪狩チームのボールから試合が始まる。


「1本行こ〜!!」


セットプレーからのスタート。


ここで赤高は、


早くも仕掛ける。


(やっぱりそう来たか…)


赤高が仕掛けたディフェンスは、


「45オッケー!!」


千秋を前に置いた1・5ディフェンス。


(…俺の相手がこのチビ?


舐めてんのか?)


体の大きさや体つきがまるで違う2人


誰が見てもミスマッチだった。


(これはたぶん椎名のアイデアだね。


さすが…


よく見てる。)


千秋が猪狩をマークしている為、


とりあえず翔太は千葉にボールを回す。


(まさか向こうも1・5とはな…)


千秋は、


ノースキルだと思われてきた。


身体的な能力や、


運動神経が乏しいからだ。


しかし、


クロは思っていた。


千秋には、


ディフェンスのセンスがあるのではないかと。


それに気付いたのは、


とある日のボール鬼。


それまで誰1人として捕まえたことのなかったクロを、


千秋が捕まえた。


始めは、


『もしかしたら?』


そんな軽い気持ちだった。


その気持ちは、


ボール鬼を続ける内に、


強まっていった。


そしてその千秋が、


猪狩に挑む。

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