《MUMEI》

アンリ様は御部屋に籠られたまま、ずっと毛糸を編んで居られるようです。

僕の為に、僕へのプレゼントとして。

あの毛糸から、一体何が出来上がるのでしょう。

僕には、まだ分かりません。

明日の御楽しみ──という事にしておきましょうか。

「‥ぁ」

考え事ばかりして‥すっかり仕事の手が止まってしまっていました。

さて、次は新しい薔薇を摘みに行かなくては。

その後はアンリ様に差し入れを御持ちして──昼食の支度を。

やる事は山程あります。

ぼんやりしてはいられません。

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