《MUMEI》

御部屋を後にした後、薔薇を摘みに庭園へ出てみると、色付いた葉が風に揺れていました。

秋は、楽しげで、何処か寂しいような不思議な季節。

僕は何故か、この季節が一番好きです。

あの御方に出会ってからは尚更。

「───────」

薔薇の他に、落ちていたドングリを幾つか拾い──僕は御邸に戻りました。

アンリ様は、まだ御休みになられているようです。

薔薇を花瓶に刺し、ドングリを小さな器に入れて飾ってみました。

おっと‥もうこんな時間。

急いで昼食の支度をしなくては。

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