《MUMEI》
にしのや
老舗旅館¨にしのや¨は、従業員100人で経営されている。
みんな、家族代々¨にしのや¨にとついでいる。
従業員みんな本当に仲が良く、旅館内はいつも笑いが絶えない。
おかげで、遠方からわざわざ足を運んでくださるお客様が多い。
帰られるお客様はみんな、「本当に楽しかったです!」と言う。
それがにしのやの誇りだと、ばあちゃんは言う。
そんな旅館に憧れて、母ちゃんは高校卒業と同時に、親の反対押しきって、身一つで「ここで働かせてください!」と門を叩いたらしい。
「凉子はよく働く子でね。みんなが嫌がる仕事も、進んでやってね。しかも愉しげになるもんだから、みんなつられてね」
そんな母ちゃんに、父ちゃんは一目惚れし、プロポーズした。
でも、母ちゃんは断った。
「私に、女将になる資格はありません。それに、わたしはタエ様の下で働ければそれで満足です。」と。
それを聞いて、ばあちゃんは怒鳴ったらしい。
「上へ行く思いがないやつは出ておいき!あたしを越えて、あたし以上のにしのやにしてやるって気持ちはないのかい!!」
母ちゃんは、プロポーズを受け、若女将になった。
父ちゃんに「ばあちゃんに頼んだの?」って聞いたら、むっとして「断られても何度も云うつもりだったのに、母さんに横取りされたんだ」だってさ。
ばあちゃん恐るべし。
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