《MUMEI》 夕焼けを見つめている内に、ふと傍らで気配がして、僕は横を向きました。 「アンリ様──」 「綺麗だね、夕焼け」 「はい。いらしてたんですね」 「うん、たったさっきからだけどね」 「あの──‥」 「?」 「薔薇園で夕陽を見た時の事──覚えてらっしゃいますか」 「もちろん。覚えてるよ、はっきりね」 「あの日の夕焼けも、綺麗でしたよね」 「うん、今のと同じ位」 「そうですね──」 僕は答えながら、穏やかな気持ちで夕陽の光を見つめていました。 前へ |次へ |
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