《MUMEI》

ですが御呼び出しが掛かる事は無く、1時間程が過ぎた頃には、ケーキのと焼けた香りが、ふんわりと流れてきたのです。

アンリ様は一度キッチンから御出ましになられると、暫くした後──生クリームを塗る為、再び戻って行かれました。

聞こえてくるハミングからすると──‥きっと、もうクリームを塗り終えて果物を飾り付けてらっしゃる頃なのでしょう。

バースデーケーキなど自分では食べた事の無い僕にとって、それはとても楽しみでわくわくする物。

夜、御目に掛かれるのが──今から待遠しいです。

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