《MUMEI》

そして、夜。

「──ここに座って?」

仰られた通りに席に着くと、目の前には大きな御皿。

被せられていた蓋が開けられ、真っ白なクリームと色とりどりの果物に飾られた、立派なケーキが現れました。

「───────」

これを、アンリ様が御1人で‥。

さぞかし‥大変だった事でしょう。

「有り難うございます」

「ふふっ、口に合うといいな──」

アンリ様は、マッチを小箱に擦って居られましたが、なかなか上手くいかない御様子でしたので──ケーキの御礼も兼ねて、火を灯すのは僕がやらせて頂きました。

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