《MUMEI》

「だからこそ‥?」

「うん。私はそう思うよ」

「──そうかも知れませんね」

違う存在だからこそ、僕達は惹かれ合ったのかも知れません。

「リュートは──執事になって良かった?」

「はい。良かったです」

あの夜、甘い気配に誘われて訪れた御部屋に眠っていた人間の少女。

絹糸のような金色の髪、透けるような白い肌。

首筋に牙を立てた時、いつもとは違う感覚がしていたのを、僕は今でも良く覚えています。

それは、この御方への恋心だったのだと、今になって分かりました。

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