《MUMEI》

「1本行こう!!」


翔太からのパス回し。


相変わらず千秋は猪狩をマークしている。


(このガキ…)


翔太が千葉にパスを回し、


未來、千葉、


そしてまた翔太へ。


千葉が翔太にパスを回した時点で、


猪狩は千秋を交わしにかかっていた。


(抜かせな…)


「う!!」


千秋が猪狩を抑えようと、


付いていこうとする。


が、


猪狩と同じ方向には行けなかった。


猪狩を抑えようとした千秋は、


逆に抑えられていたからだ。










(甘いね。)








クロに。








「ヒュッ!!」


千葉からパスをもらった翔太は、


瞬時に次のパスを出す。


そのスピードのギャップに対応できるディフェンスはいなかった。


「ナイスパス!!」


選手たちもギャラリーも、


思わずそう口に出してしまうようなパスだった。


「行け!!」


猪狩がパスを受け取り、


千秋が前に出ている分空いているスペースへと切り込む。


(よし!!)


(よし!!)


(1点だ!!)











「バシッ!!」








一瞬、


時が止まったかのように選手たちは凍り付く。









「なっ…
ナイスキー!!」


ベンチから声が出る。


村木がシュートを止めたことに、


ギャラリーからも歓声が沸き上がる。


その歓声が、


鳴り止まない内に、


赤高は、









次の攻撃に移っていた。










「戻れ!!」

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