《MUMEI》 ぼんやりとしながら薔薇を見つめていると、ふと頬に、ふわり、と何かが当たりました。 それが、何なのか。 直ぐには分かりませんでしたが、薔薇の香りで気付きました。 「アンリ‥様‥?」 それは紛れも無く、アンリ様の唇だったのです。 「まだ──してなかったから」 「───────」 僕は、先程よりも更に頬が熱くなった気がして、俯くしかありません。 「リュート」 「っ、はい」 横を向くと、日溜のようないつもの笑顔。 「大好きだよ」 アンリ様の小さな、ちょっぴり大きくなった手が、僕の手に重ねられました。 前へ |次へ |
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