《MUMEI》
逃亡
誰かの声が聞こえる。
複数だ。
ユウゴはゆっくり目を開けた。
ぼんやりした視界に二人の男が見える。
ジーパンをはいていることから、追撃隊ではないことがわかる。
二人は小さな声で話していた。
「あいつらは?」
「ああ、そっから落としといた」
低い声に、まだ若い男の声が答える。
「けどさ、ほんとにこいつなの?」
若い声の男が言いながら近づいてくる。
「間違いない。顔をよく見てみろ」
低い声に、若い男はユウゴの顔の前にしゃがみ込み、ユウゴの髪を掴んだ。
そして無理矢理頭を引き上げる。
「……ふぅん。暗くてよくわかんねえや」
ユウゴの顔を間近で眺めながら、男は首を傾げた。
ユウゴは何度も瞬きをして意識をはっきりさせようと試みるが、頭の中がグラグラしてなかなかはっきりしない。
「お? なんだよ、目覚めてんじゃん。ほら、起きろよ」
男は言いながらユウゴの頬を軽く叩く。
「いってえ……な。放せ」
ユウゴはなんとか言葉を絞り出す。
すると男は軽く笑うと、パッと髪を掴んでいた手を放した。
ユウゴはゴツンと頭を打ちつけてしまった。
なんとか起き上がろうとするのだが、体に力が入らない。
そんなユウゴを見下ろしながら、もう一人の男が若い男に指示を出した。
「行くぞ。おまえ、そいつを背負ってこい」
「……はーい」
やや不満げな口調で返事をしながら、若い男はユウゴを乱暴に担ぎあげた。
そしてそのまま歩き出す。
動くことができないユウゴは、どうすることもできないまま、再び意識を失った。

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