《MUMEI》
失ったモノ
−菊地宅−
[ピンポーン]
菊地「入れ。」
翔「先輩、大丈夫ですか?」
菊地「何の用だ。」
翔「あ、あの…じ、実は…その後の経過なんですけど、千草教授があのどさくさの中で自殺したらしく、その、あの…」
菊地「何だ。」
翔「あっ…先輩の言っていた麗子さんという方は、取り調べ中に自殺しました。」
菊地「!!」
翔「一度、あの、その…」
菊地「帰れ。」
翔「えっ?」
菊地「帰ってくれ!」
翔「………失礼します…」

菊地「何で、何で麗子が死ぬんだよ!!…約束してたじゃないか、あとほんの少しだったじゃないか!!……何で、何でだよ!!………」
米爺「おやおや、どうしたんだね?」
菊地「麗子!?……いや、その声は…千草教授!?」
米爺「はっはっはっ、菊地君。無欠席の君がここで何をしとる。これも恋の病かの?」
菊地「彼女は…だいたい教授、貴方は御亡くなりになられたはずじゃ」
米爺「そうじゃ。わしは殺されたんじゃ。」
菊地「えっ?」
米爺「しかしのぅ、わしゃ気付いたんじゃよ。」
菊地「気付いた?」
米爺「お前等のような当局の犬に騙されとったとな!」菊地「違う…違うそれは」
米爺「じゃから!わしは悔しゅうてならんかった。じゃが、わしの肉体はもうない。」
菊地「それじゃあ…まさか!」
米爺「その通り、お前さんにこの悔しさと悲しみの代償、償ってもらうわ!はっはっはっはっ」
菊地「嫌だ、嫌だ!」 米爺「何が嫌じゃ。人を散々陥れ、弄んでいただろうに。揚げ句の果てには、最愛の人まで無くしたかのぅ?」
菊地「違う…違う」
米爺「黙れ!…前のわしと比べるでないぞ。わしの理性など、とうの昔に売り飛ばしたわ。さあ、泣け!喚け!叫べ!さあさあさあ!!」
菊地「う……う゛…………う゛ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
CONTINUE

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