《MUMEI》
しんゆう
「ゆ〜う〜っや!」


ガバッ!


「うわっ!」


(こぼれる!)


床に座っていた俺は後ろから頼に抱きつかれ、危うく持っていたペットボトルを落としそうになった。


「暑苦しい」

「え〜、ひどい。俺達もう『しんゆう』じゃん?」

「それは私!」

「それは俺!」


(う、うるさい…)


俺の、左には志貴が


右には柊が


かなり、密着した状態で座っていた。


(暑い、うるさい…)


広い体育館でやけに密集しているこの状況に、俺はかなりうんざりしていた。


「人気者は大変ね」

「…柊だけでも、止めて下さいよ」


俺は柊の向かいに座っている希先輩に助けを求めた。

(希先輩、志穂さんの娘だし…)


希先輩が強く注意すれば、志貴や頼も大人しくなると思った。


「う〜ん、…でも」

「でも?」

「…多分、そのうち納まる…と思う」


(本当か?)


俺はとりあえず、頼を自分から引き離し、三人を見守る事にした。


…数分後。


「じゃあ、俺は、『心友』・志貴が『親友』・柊が『真友』って事で、オーケー?」


何だかよくわからないが、三人は三人なりに納得する結論にたどり着いていた。

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