《MUMEI》

「実はさ、今日、凪を誘う前に、本当は、九郎誘ってたんだ」


無理して笑いながら、秋奈は話し始めた。


「でもさ、「汚ギャルと一緒に歩けるかよ」って鼻で笑われてさっ。そんときは、笑ってたし、あーなんか用事あるんだなあって、思ってたんだけど…ははっ……まさか、さ……」


秋奈の目から、涙が流れた。


「秋奈っ…」


「っ……うぅっ……」


声を殺して泣く秋奈。見てて、本当に痛々しかった。

あたしは、その小さい肩を引き寄せて、自分の胸の中にトンと置いた。


「秋奈ちゃん。泣くときは、もっとおっきな声で泣くもんよ?」


「っ……うっ……うわわあぁぁぁー」




大声で泣く秋奈を抱きしめながら、あたしは、さっきのカツヤが、頭から離れなかった。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫