《MUMEI》
「実はさ、今日、凪を誘う前に、本当は、九郎誘ってたんだ」
無理して笑いながら、秋奈は話し始めた。
「でもさ、「汚ギャルと一緒に歩けるかよ」って鼻で笑われてさっ。そんときは、笑ってたし、あーなんか用事あるんだなあって、思ってたんだけど…ははっ……まさか、さ……」
秋奈の目から、涙が流れた。
「秋奈っ…」
「っ……うぅっ……」
声を殺して泣く秋奈。見てて、本当に痛々しかった。
あたしは、その小さい肩を引き寄せて、自分の胸の中にトンと置いた。
「秋奈ちゃん。泣くときは、もっとおっきな声で泣くもんよ?」
「っ……うっ……うわわあぁぁぁー」
大声で泣く秋奈を抱きしめながら、あたしは、さっきのカツヤが、頭から離れなかった。
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