《MUMEI》
今日は厄日なのか?
「ねぇ、沢村君。」
次の休み時間、竜崎はやはり声をかけてきた。
「…ん?」
とりあえず返事をする。
「学校案内してよ。おれ今日初めてだから全然わかんないし。」

またこの笑顔だ。何かカンに障るんだよな…

「自分で探検してくれば?楽しいかもよ。」

何でお前のために休み時間潰さなきゃなんないんだよ。面倒くさいし。

「えぇ〜。心細いじゃん」「たかが校内だろ、自分で色々みてこいよ。心細いってお前、女じゃあるまいし…」

ホント、こいつ見た目女っぽい。

「ちぇ、わかった。」
そう言うと竜崎は寂しそうな顔をして一人教室を出た。
「沢っちゃん!あいつ転校生だったんだなぁ。」
ニヤニヤしながら寺田が来た。
「お前、何ニヤけてんの?」
すかさずツッコミをいれる。寺田がニヤける時は絶対嫌な事を企んでいる時だ。「だってさ、あいつそこら辺の女よりよっぽど可愛いぜ?」
「お前、そんな趣味あったんだ。知らなかったよ。」俺はからかい半分で冷ややかな目をして言った。
「勘違いすんなって!オレ彼女いるし。」

こんな時だけ彼女アピールかよ。彼女さんも可哀相に…

「いやね、オレが言いたいのはさぁ…」
そう言いながら寺田は俺をじっと見た。
「何?!俺が?」

信じらんねぇ。寺田の奴俺の事疑ってるし。長年の付き合いだろ?そりゃないぜ…

「だってさ〜沢っちゃん、こんな男前なのにずっとフリーだろ?って事はさ…」「俺は男に興味ねえ!」 あまりの言い掛かりに腹が立ち、思わずムキになってしまった。
「そ、そんなにムキになんなよ、冗談だって。」
寺田は少し驚いた様だ。それもそのはず、俺は滅多にキレた事がなかった。
「お前が変な言い掛かりつけるからだろ。」
「悪かったって。お詫びに女紹介してやっからさ!」「は?!」
「嫌か?じゃあやっぱり…」
また寺田はニヤけ始めた。「わかった!紹介しろ!」ハメられたと思ったが、もうやけくそだ。
「よしっ決定!じゃ明日7時にいつものカラオケボックス集合な。」
それだけ言うと寺田はどこかへ行ってしまった。

明日って日曜日じゃん…もう最悪。しかも現地集合かよ。

「ねぇ、さっき何話してたの?」
校内探検から戻ってきた竜崎が聞いてきた。
「関係ねえだろ。」
俺は冷たく遇った。
            寺田は勝手だし竜崎はウザいし…学校終わりには今朝の女が待ち構えてるし。本当に今日はツイてない。

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