《MUMEI》
愛は会社を救う(10)
デスクの傍らに立ち止まると、丸亀は腰を屈め、仁美の耳元で必死に何事か囁き始めた。
対照的に仁美のほうは、PCのモニタに目を向け、悠然と長い脚を組んで座ったまま、黙ってそれを聞いている。
(こりゃ、どちらが上司かわからんな)
2人の遣り取りを見ながら、私はただ苦笑するしかなかった。
やがて、丸亀の哀願をひととおり聞き届けたのだろう。
仁美は、左の口角だけを僅かに上げ、頬に薄っすらと冷ややかな笑みを浮かべた。
ぞっとするほどサディスティックな輝きに満ちた瞳。その眼光たるや、さしもの私も些かたじろいだほどだった。
「わかりました。こちらから説明に伺いますわ」
そう言って仁美は、すっと席を立った。
モデルのような長身に、ほっそりとした後姿。だが、タイトなスカートに包まれた腰周りは、それなりに女性的な丸みも帯びていた。

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