《MUMEI》 「……変な奴」 俺は、目の前に立っている女を、 冷ややかな眼差しで見ていた。 女はさっきから頬を抓ったり、 突然俺をじっと見ていたかと思うと、 顔を真っ赤にして頭を振っていたり………。 とにかく忙しそうだった。 さて、昼食も終えたことだし、 教室に戻るとするか。 女を無視して行こうとすると、 またもや行く手を阻まれた。 「何がしてぇんだよ。」 飽きれて大きなため息しか出て来ない。 「あっえっと……そのっ!!」 コイツ……。 俺は女を無視して立ち去ろうとした。 だが、またもや行く手を阻まれた。 女に。 「お前……何のつもりで俺に嫌がらせしてんだよ?」 軽く睨み付けると、 女は慌ててこう言った。 「い、嫌がらせじゃないの!!」 「じゃあ何?」 「私を良く見てよ!!」 「は?」 「本当に覚えてないの? 私のこと。」 女の顔は、今にも泣きそうだった。 前へ |次へ |
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