《MUMEI》
消滅と転生
『悲…悲…』
優しい齋の声で目覚める。


『迎えが、来たようだえ!』
齋が、指差す方へ視線を移す。


光りの中から、烈火が現れた。


『よお!二人とも…気持ちの整理はついたか?』


『ああ、済まぬな、死神の息子よ。』


『齋、烈火だよ、俺は…』


『うむ、烈火。ありがとうだえ、色々と…』


『よせよ、これが俺の…仕事だからな。

さあ…そこに、二人とも座ってくれ!』


『齋…』


『悲…ありがとう、そなたは、儂の妻だえ。愛している。』


『うん、齋…ありがとう。あなたを愛せて、私は幸せだったわ。』


手を取り合う二人に…『静寂の鎌』が静かに振り降ろされる…。


気を失った悲の隣で…


齋は…蒼白い光りに包まれていた…。やがて…齋の身体は…光りの粒となり…霧となり…消滅した。


烈火は…悲を抱き抱えると、光りに包まれて消えた。


誰も居なくなった虚無の世界は、空白が拡がるのみだった。

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