《MUMEI》
それから…
『悲〜これを、弁天ちゃんに、届けてくれないか?』


『あ、はーい、お父さん!』


『あ、待てよ、俺もついて行くよ!悲。』


『えーっ?来なくて良いわよ、烈火は!』


『悲ちゃーん、冷たい!』


『ほらっ、じゃれあってねえで、早く行け!』


『もう、お父さんに誤解されるじゃない!』


『なんだよ、本当にすれば、良いだろ?なっ俺達、付き合おう?』


『やーですよ!烈火なんて…』
悲は、屈託なく笑った。


あの日…悲の中から、齋との切なく幸せな恋の記憶は抜け落ちた。

あの事を知る者は…俺の親父(死神)と悲の親父(貧乏神)と俺の三人だけ…。


齋は無事、転生を果たし…何処かでスクスクと育っていることだろう…。新な狐神となる為に…。

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