《MUMEI》

「ねっ、どう??」

母ちゃんはにこにこして尋ねてくる。

「うーん…まぁ、会ってみることは、会ってみ」

「お母様!すぐにお電話して参ります!!」

母ちゃんは、ばあちゃんが返事をする前に、部屋を出て行ってしまった。

「……」

開いた口が塞がらない。

「凪沙」

名前を呼ばれて目線を合わす。

「本当に、いいのかい?」
「へ?」

「誰か、好きな殿方はいないのかい?」

(す、するどいな〜…)

ばあちゃんの言葉に、一瞬たじろうが、平然を装って、言った。

「そんな人いないよっ。」
「そうかい。なら構わないんだが…」

「うん、大丈夫。心配してくれてありがとう」




必死に笑った。
頭の中に浮かび上がる、カツヤの全部を見ないように。


必死に、笑った。

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