《MUMEI》 「……チッ 羽虫が。」 此処で、はっきりさせなければいけないのは、僕等の『巨神』特殊部隊は能力強化実験により翼族の力を複製させられた兵士は軍の兵器であり、その僕等は小隊に分隊され、それを纏める人間はロスト大佐により選ばれた国の息がかかった国家の犬共だ。 奴らは僕等を昇進するための道具としか見ていない。 権力を振り乱し、虐げ、けなす……僕等は人でも無いらしい。 だから、不当な暴力も受ける。廊下で擦れ違う時も上司の前で敬礼し、目付きが悪いと言って殴られたりもする。 「ウチの部下が粗相をしたようで……B−013、跪づいて手を出せ。」 今、僕の両手を鞭で打ち付けた上司は名門貴族スレヴァ海軍中将の娘、エレナ・スレヴァである。 彼女は僕と四歳違いの十八歳で曹長を務め、父親の名前による異例の出世だとも陰で噂されていた。 「エレナ曹長は父君に似て正義感がお強いことで。」 にやり、と含み笑いをして第五小隊バルナロ曹長は退散して行く。 バルナロ曹長は特に僕等翼族への仕打ちが厳しいことで有名だ。ストレス解消とでも言うのか、過去に一人脳震盪を起こし、身体を不自由にした兵士がいる。……上の力により揉み消されたが。 「……ふん、卑しい血め。」 エレナ曹長は吐き捨てるように罵った。 エレナ曹長は苦手なタイプだ。彼女は自分が教育された正義を正しいと思い込み、それに酔っている。 貴族は正しい、高貴だ、そして身分の低いものにも平等だ……と。それが差別を生むとは知らずに。 「……有難うございます!」 彼女はその言葉さえ聞ければ満足なのだ。 前へ |次へ |
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