《MUMEI》

************

『あたしさ、あんとき、初めて、九郎に女扱いされたんだ』


『恥ずかしいけどさ、めちゃめちゃ…嬉しかったんだ』


『だからさ、もしダメでもさ、自分の気持ち、伝えたいなあって、思ったんだ』

『あたし、また、昔みたいに、九郎に、「秋奈」って、呼んでほしい』


************



「………」

「九郎さ、中学んときさ、秋奈のこと、クラスの男子と話してたことあるでしょ」

「へ…?」




************

放課後。
クラスの男子たちの声が聞こえた。



『秋奈ってさぁ、化粧しなくても絶対綺麗だよなあ』
『!』

『たしかに!結構モデル顔だしなぁ』

『…///』



『おまえらなあ、』

『!』
好きな男の声。


『あんなギャルのどこが綺麗なんだよ!あんなん汚ギャルだっつーの!!化粧とったとこなんか見れるかよ!!なぎはスッピンで十分綺麗だけどなー』

『っ……』


その場から走って逃げた。

夜、声を押し殺して泣いた。


************

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫