《MUMEI》 だから、気がつかなかったんだ。 あの時、家族に何があったのか。 これから、何が起ころうとしていたのか。 当時の私は、この幸せな時間が、いつまでも続くと思っていた。 続けばいいと思っていた。 でも、それは叶わなかった。 気づいた時には、お父さんはいなかった。 突然、私の前から姿を消してしまった。 その後、私と遊んでくれたのが、悠斗だった。 普段は怖い顔をしているけど、遊んでくれる時の顔は、とても優しい顔だった。 健斗は、必要以上に話さない人で、話しかけるのが少し怖かった。 だからいつも遊びのは、悠斗と一緒だった。 優しかったはずなのに・・・。 あんな人じゃないと思っていたのに・・・。 誰かに嘘だって言ってほしかった。 でも、あの事は誰も知らない。 いつか誰かに言える日がくるのだろうか。 この時は、そう思っていた。 前へ |次へ |
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