《MUMEI》

『薔薇をどうもありがとう。ファンの人と、会えるのは嬉しいわ。』
南条ハナエは、ご機嫌な笑顔だった。


…薔薇の効果は、霊験新たかだろう?…
榊が小声で言った。


…そりゃ……ね…

…花屋の薔薇、全部買い占めて贈ったんだもの…誰だって、こんなバカな事する人の顔が見たいわよ!…


『あなた達は、運が良かったわ、今日はちょっとロケがお休みなのよ。

今、有名な監督の大作に入ってるのよ、勿論主役で是非にと言われたから、出てあげたんだけど…

明日からは、またロケで遠くに出かけるのよ。

この役は、私じゃなくちゃ…昔から、この作品のような役は、私しか出来ないのよ。』

南条ハナエが、台本を片手に自慢気に話す。

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