《MUMEI》
今月の美術の授業内容はなづきの好きな油絵である。更に自由に描いていいときた。
なづきは空を描くのが好きだ。
理由は深く考えない。
今回のモチーフも空
久しぶりになづきは部活に出る。授業の油絵が終わらないからだ。他人の作品棚を漁る。
他人の作品に興味が無いわけではない。
美術部の面々は上手い下手はともかくとして絵の具は扱い慣れている。
たまに、アニメちっくなイラスト画。絵は好きだが、美術とはまた違う人種だ。
ユニークな抽象画達を挟んで異質な黒いキャンバスを見た。
よく見ると黒ではなく、紫やコバルトブルーの原色で塗り潰してある。
うっすら木炭の下書き。人の腹部のようだった。
「オハヨー、なづきじゃーん。久しぶりだね。」
中学からの友人、馬場 佳代がなづきの横に立つ。
「あー、見てたんだ新入部員の。凄いよね。まだ下地だけど油絵でここまで出来るなんて。」
「カナヤ ルナ……
外人?」
なづきは黒い油絵を裏返し片仮名で記入された名前を音読する。
「カッコイイ名前だよね、本人はカワイイし……あー女として自信無くす。」
佳代は机に腰掛ける。
「なづき同じ二組でしょ、転校してきたときめちゃくちゃ騒がれたよね」
「―――え、覚えてない」
「……あんたに聞いた私が阿呆だった。」
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