《MUMEI》

『兼松様……もうお止めになられたら如何ですか?…』



『………。』



兼松は〆華の忠告を無視し、えんじ色の薄い座布団の上で札を裏返してかき混ぜ始めた。



馬鹿な男だ…



博打に熱くなった後に仮に勝ちを収めたところで、憎悪すら覚えた女相手に、果たして陰茎が起つのだろうか…?



この場に居合わせた兼松以外の人間なら誰しもが思うところだろう。



『兼松様がそう仰るのでしたら、お付き合いいたします……』



〆華はさも仕方無しと言った様子で、兼松に悟られない程度の溜め息を交じえて応えるも…



薄く紅を引いたその唇は、不適な微笑すら浮かべていた…。

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