《MUMEI》

「どうして、こんなことになったんだ」

「コイツが頬打った」
なづきの言い分

「コイツが絵に触って、女って言った。」
ルナの言い分

「お前ら、どっちもどっちだろう。」
教師の極論

 「「冗談じゃない!」」
なづきとルナは声を揃えた
「確かに、殴った金谷も悪いが、六車もカンに障る言葉を発した訳だ。
……しかも六車は金谷の左眼に青タンを残してる」
二人を交互に見て、教師野沢はにやっと笑った。
「手加減くらい、覚えとけよ、大人になろうぜ?」



野沢に帰って良しの許しを得て、なづき達は扉から出て行った。
野沢は争いの原因を聞くよりも自分の趣味の釣りの話ばかりだった。

だんだん頭も冷えて先刻ひっぱたきあったことが嘘のようだ。


部室に戻る。
長い廊下をルナは糸に引かれてるように、その1メートル後ろになづきがゼンマイ仕掛けのように歩いた。

「大人になるってなんなんだろう」
なづきにはルナが誰かに言ったのか独り言なのか判らなかった。

「それは大嫌いなピーマンが食べられるようになったくらい些細なこと」
なづきも何と無く呟いた。

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