《MUMEI》 ピンチボスは囁くように聞いた。 「最初に確認しておくが、叶愛梨、だね?」 愛梨は目を丸くした。名前を知っている。ということは計画的な犯行か。 「どうなんだ、質問されたら答えなきゃ」 愛梨は慌てて頷いた。この状況で逆らえるわけがない。 ボスはさりげなく愛梨のおなかを触った。 「んんん!」 男の手から逃れようと腰を動かすが、そのしぐさは返ってセクシーに映り、男たちの欲望を刺激してしまう。 「ホントにかわいいな」 嬉しくない。 「愛梨、話がしたい。猿轡をはずしてあげるけど、悲鳴を上げたらダメだよ」 愛梨は二度三度と頷いた。 「悲鳴を上げたらすっぽんぽんにしちゃうよ」 「んんん!」 彼女は激しく首を横に振った。全裸は困る。 ボスは優しく猿轡をはずした。愛梨はすぐに言った。 「お願いです、ほどいてください。男の人にはわからないかもしれないけど、怖くて喋れません」 しかしボスは相変わらず落ち着いた口調だ。 「ほどいてほしいか?」 「はい」 「よしわかった。ほどいてやる」 ボスはビキニの紐に手をかけた。 「何をするんです!」 暴れる愛梨に、ボスはとぼけた顔で聞く。 「おまえがほどいてほしいと言ったんだろ?」 愛梨は心底頭に来た。 「抵抗できないと思ってバカにして。変なことしたら警察に言うからね。あたし泣き寝入りはしないから!」 いきなり強気に出た愛梨を見て、ボスは内心ほくそ笑んだ。 「いい度胸してるじゃねえか?」 ボスは愛梨の顎を指で掴むと、グイッと上向かせた。 「あっ…」 女にとっては屈辱的なポーズ。彼女は腹筋に力を入れた。まさかボディブローは来ないだろうが念のためだ。 「愛梨。今度生意気な態度取ったら水着を剥ぐぞ」 愛梨は黙るしかなかった。 「いいのか?」 「やです」 「よしいい子だ」 ボスはまたおなかをさすった。愛梨は唇を噛んだ。 「愛梨。しおらしくしていれば乱暴なマネはしない。約束する」 悔しいけど今はその言葉を信じるしかなかった。 「本題に入ろう。君は、ブログをやっているね?」 そっちか。 愛梨は身じろぎした。小林店長が言っていた逆恨みが、こんなにも早く現実のものになるとは。 「愛梨。ブログを閉鎖してくれれば、無傷で解放してあげよう」 愛梨は聞いた。 「断ったら、ひどいことをするの?」 ボスは深くため息を吐くと、子分二人の顔を見て呟いた。 「おい。この子まだ、自分の置かれている立場がわかってないみたいだから、教えてやれ」 「待ってました」 二人の黒覆面が動いた。愛梨は不安な顔色で二人を見ていた。 一人はブラに、一人は下に手をかける。愛梨は叫びながらもがいた。 「待って、待って、待ってください!」 金切り声を上げる愛梨を見て、ボスは二人を止めた。 「自分の立場が少しはわかったか?」 愛梨は顔を赤くして横を向いた。 「わかりました」 ボスはなおも迫る。 「ではパスワードを教えてくれるね?」 「え?」 彼女は蒼白になった。 「パスワード?」 「忘れたと言ったらすっぽんぽんだぞ」 先手を打たれた。愛梨は困った。パスワードを教えたら、ブログを閉鎖されてしまう。 今までの魂を込めた渾身の500ページが消える。 暴力に屈するのは悔しいし、脅しに負けたら、ブログでの強気の発言が嘘になる。 愛梨が無言でいると、嫌らしく内股を触ってきた。 「ブログと体とどっちが大事だ?」 手はさらに伸び、またビキニの紐をつまむ。 「体です、体です」 「だよな」 とにかく今は、無傷で解放されることが最優先だと愛梨は思った。 「愛梨。今夜ブログを閉鎖すると約束してくれたら、解放してあげるぞ」 「約束します」即答した。 「よし、じゃあ警察に行かないように保険をかけよう」 「え?」 また黒覆面二人が動く。カメラが見えた。愛梨は足がすくんだ。 「写真を撮らせてもらう」 「イヤ…」 大ピンチだ。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |