《MUMEI》

「珠季、怪我‥してない?」

「ぁぁ、特には」

「綾瀬君‥やっぱり速いね」

「運動だけじゃねぇ。‥アイツは完璧男子だから」

「珠季‥?」

「っし、っと‥。戻るか、教室」

「珠季‥どうしちゃったの?」

「ぇ」

「何か元気──」

不安げな顔をした千代の額を

軽く指でつついた。

「心配すんなよ、アタシは元気だからさ」

「ほんと‥?」

「おう」

アタシは

出来る限りの笑顔を作って言った。

千代はまだ不安げだったけど──‥

少しは安心してくれたらしかった。

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