《MUMEI》

『私の若い頃の、舞台衣装なのよ。』


『女は、天性の魔物よ。メイキャップと心の持ちようで、どんなにでも変わるわ。杳子、素敵よ。』


『鏡の中の…これが私?』


『私の若い頃とそっくりだわ、デビュー当日の私にそっくり。』


『南条さん…?』


『そして…年老いた…これが今の私。

あなたは若い…

若いと言う事だけで、私より遥かに多くの意味を持っている。

今、思い知らされたような気がする。私は老いた事で、私の全てを失っているのね…

何時までも、若く美しく見せようとするよりも、俳優としてもっとやらなければならない事が…あったような…

あなた達の目的は、引退発表の時、着けていたペンダントね?

良いわ、誰にあげたか思い出してあげる、それで良いんでしょう?』


『あ…あの、私達は…』


『良いのよ、薔薇のお礼代わりだと、思って頂戴。』

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