《MUMEI》

『甲崎(こうざき)社長の、本当の娘はお前じゃなく、孤児だと思われていた、真柴 杳子だと言う事を。』


…私の娘夫婦が貧乏を苦に、赤ん坊だけを残して死んだ時、私は…
甲崎家の、幸福に包まれた赤ん坊の乳母をしていた。

私は貧しく、小さな孫のお前を育てる力も無く、不幸にするのは分かりきっていた。

魔がさした私は、甲崎家の赤ん坊とお前を、すり替えて〜杳子を孤児院の前に捨てた。

この学園の学園長になれたのも、甲崎社長のお陰…そして、後ろめたさは増すばかり…

罪滅ぼしに、杳子さんに奨学金を出したりしていたけれど…あの時の罪は消えやしない。』


『聞きたくないわ!

だから、私は杳子が入学して来た時から、親友として面倒見てるわ。

実の祖母の癖に、私を不幸に突き落とす気?

……私は嫌よ!』

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