《MUMEI》

[蒼視点]


図星をズバリ刺された瞬間

そんな瞬間なのに


『恋ってね、理屈じゃないのよ』


何でか


『気付いた時にはしてるの』


不意に思い出したのは


『だから、俺と寝たのかよ』

『そうよ』


そう言って笑った


俺が、初めて抱いた女の言葉だった


思春期の俺は、女の体に興味があり


年上の女は、そんな俺を誘惑した


『俺、別にあんたの事何とも思ってないんだけど』


行為後、女に向かって俺はそう言い放った


『それでも、いいの』


何がいいんだかわからなかった


女は


顔も体も良かったし


頭だって悪く無かった


なのに


『佐倉君の初めてになれたし、私は、佐倉君が好きだから』

『バカじゃねーか?』


何でか、女は恋が絡んだ時だけバカになった


『いいの、バカで』


…何故だろう


恋は、突然やってきて


恋は、人をバカにする


そんな考えが、俺の頭をぐるぐる回っていた

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