《MUMEI》

[櫻視点]


「あの、…言い難かったら…」


本当は、聞きたいけれど


何となく、聞きたくないような


そんな不思議な気持ちになってしまった私に


「いや、話すよ」


ドキン!


な、何で笑顔!?


「…ちゃんと、話すから、聞いてろ」


あ…


ズキン


今度は、切ない顔…


「俺の、多分初めて恋した女の事を話すから、ちゃんと聞いてろ」

「は…い」


きっと、すごく大切な方なのですね


ズキン


何故、でしょう…


ズキン


ものすごく、聞きたかったはずなのに


ズキン


私は


聞きたくない…


でも


「ちゃんと聞いてろ」


蒼様にそう言われると


私は、断れません


だって


私が望んだ事ですから


「ちゃんと、聞きます」


握りしめた手を、痛む胸にあてて


私は、蒼様を見つめました

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