《MUMEI》

対峙する勝負師たちは、8枚の小さな札を指先で扇型に広げると、視線を二〜三度、手札と場札の間で往復させる。



場札の中から役作りに必要な札を、相手より先に射止めるために、最も早く勝利に到達する手回しを吟味してゆく…。



眼球の往復運動が終わると、兼松は腹わたの煮えくり返った形相のまま、鋭い眼差しを芸妓に突き射した。



しかし芸妓は、はぐらかすように視線を外して、その無言の恫喝を軽くいなす…。



水を打ったような静けさの中…



肢体と金を賭した真剣勝負の幕は、こうして切って落とされた――…。

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