《MUMEI》

[櫻視点]


意味不明の胸の痛みを堪えて


震えてしまいそうな声を、何とか出して


「蒼様は、今でも、…その、方を?」


その、中途半端な私の質問の続きを


賢い蒼様はすぐに悟り


満面の笑みでお答えになりました


何故でしょう


さっきまで、蒼様の笑顔を見ると動悸がしたのに


今は


ずっと


ズキン


…痛い


「あぁ」


ズキン


「好きだよ」


ズキン


あぁ


本当に、恋は素晴らしいものなのですね


蒼様に、こんな笑顔をさせるだなんて


その時


『切ない恋もあるらしい』


先ほどまで、淡々と説明していた蒼様のお言葉を、私は不意に思い出していました


確か、それは…


『片想い』


そう、いう言葉でした


そして私は


知らず知らずのうちに、その言葉を口に出していました

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