《MUMEI》

「…っ!おい!お前どうやって!…どうやって拘束を解いた!!」

「………?こうやってだよ?」

季紫は不思議そうに医十印を振り向き、医十印の拘束に手を掛け、ゆっくりと音もなく───引き千切った。

「!!?」「!?」「?」「?!!」「!」「!!!」「…」「?…!!」「!!!!!??!!」………


その場にいた誰もが目を疑い、季紫に注目した。

もちろん喜多も例外なく見ていた。それでも、喜多は引きつった笑みをどうにか余裕の笑みに戻した。その笑みは楽しみを見つけた子供のように無邪気な笑みにも見えた。

「君も…やるでしょ?」

「…ああ…もちろんだ!」

季紫の問いに医十印は力強い返事を返した。

それを合図に、喜多が声を上げた。

「皆さん!遠慮はいりません!!殺すつもりで…いや、殺せ!!!」

周りの者達が一斉に襲いかかってくる中、
季紫は静かに。医十印は冷静に。
構えて待った。

最初の1人が鉄パイプを季紫の頭に叩きつける直前、季紫は鉄パイプを掴み、その勢いで相手の腹に鉄パイプを叩き込んだ。

ただそれだけで男は壁まで飛ばされ、叩きつけられ、気を失う。

季紫の体で動いた箇所は右腕のみ。右腕だけで人を1人50メートル先の壁まで飛ばした。

その化け物じみた事実に驚いた者も居たが、止まろうとはしなかった。


その者を始め、季紫に襲って来たものは全て残らず、気絶する羽目になる。

ある者は直接壁に叩きつけられ。

ある者は首に鉄パイプを喰らい。

ある者は味方の出した攻撃の受け流しで。

ある者は打撃を直接喰らい。

ある者は受け流されそのまま他の者の頭にぶつけられ。

───その様な攻撃が繰り返され、いつの間にか全ての者が喜多を残し倒れていた。

「…っ!」

喜多は周りを見渡し、そして季紫の方を向き直り叫ぶように言った。

「いったい…!!どうなっている!?いいか?好き勝手やってくれましたが、それ以上何かするようならこちらも…容赦はないですよ?」

「君一人では、俺を倒すのは不可能だ。」

「倒す?…何か勘違いしてませんか?私は倒すのではなく…」

喜多は喋りながら服の内ポケットから重量感のある黒光りする物質を出し、

「殺すんですよ!!!!!!!!」


刹那、激しい破裂音とほぼ同時に季紫が床にうつ伏せになる。

それを見た喜多は我慢していた物を吐き出すように笑う。

「ハハハハハ!アッハハハハハ!!言ったじゃないですか!?"甘い"んだと!」

いきなりのことに反応が遅れてしまった医十印が火がついたように声を出す。

「っ!!おい!死鬼!」

返事はなく、倒れたまま。喜多の笑い声だけが廃屋にこだました。

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