《MUMEI》
生きたい??
「森山??」
「生きたくても・・生きれない奴だって・・いるんだよ・・」
「どうしたの・・・・?」
「俺の妹・・今年の春に死んだんだ」
「えっ・・?」
「病気だった・・心臓病だった・・」
「・・・」
「俺さ・・初めて・・人の『死』って物を実感したんだ。それまでさ・・今・・生きている事が当たり前だと思ってたから・・」
「うん・・・」
「でもさ・・雪が・・・『生きたい』・・『生きたい』・・『死にたくない』って何度も何度も言ってた。
 苦しそうに病気と闘ってる毎日が・・『幸せだ』って。
 俺には・・まったく意味が分からなかった。
 でも・・雪が死んで分かった。辛くても・・必死に生きてるから・・『今日・・生きてるのが幸せなんだ』って思えるんだって・・。」
「雪って・・・」
「妹の名前・・・不覚にも・・お前と・・・同じ名前だったんだ。だから・・お前と・・雪を重ねちゃったんだな・・」
「そうだったんだ」
「俺が・・屋上に来たのは・・お前の自殺を止めに来たわけじゃない。ここに寝転がるとな・・いつも下で眺めているより・・空が近くに感じるんだ」
「空・・?」
「そう・・空。雪が大好きだった空。俺も空が大好きなんだ。雪が近くにいるような気がするんだよな」
「そうなんだ」
 ちょっと切なそうに笑う、森山。
 きっと、苦しい思いをして・・ここにいるんだろう。
 そして・・乗り越えたから・・大切な物を手に入れられたんだろう。
「こっちに・・おいで」
「うん・・・」
 森山が手を広げた。
 私は・・きっと怖かったからだろう。森山に抱きついた。
 その温もりは・・『死』という物を、自分なりに見つめて・・理解した・・暖かい・・暖かい光のような温もりだった。
 きっと・・森山の瞳には・・雪さんが・・うつっているんだろう。
 だから・・少しだけでいいから・・森山に幸せな夢をみさせてあげたかった―。

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