《MUMEI》
逢えない時間
 燐と逢えなくなって・・しばらくたった。
 転校先の学校にも慣れ始めた、今日この頃。
 新しい友達という存在もできた。
「那美(なみ)」
 友達の北原那美(きたはらなみ)。 幼なじみだったんじゃないかと疑われるくらい仲がいい。

「雪・・次・・理科だね」
「理科かぁ・・・・はぁ・・」
「雪っていつも・・理科になるとため息つくよね・・、何で?」
「理科は嫌いじゃないよ」
「じゃあ・・なんで」
「悲しい思い出があるの・・・・」
 悲しいのだろうか。あの今まで生きていた中で一番輝いていたといえるあの時間を・・・あの時間をそんな風に言っていいの??

「そっかぁ・・・それって・・『燐さん』の事でしょ?」
「えっ?何で知って」
「雪・・・・居眠りすると・・小声で「燐」って何度も何度も言ってるから」
「え・・・?」
 寝言さえ・・燐に染まっていた。燐という色に染まっていた。

「燐さんの事今でも好きなんでしょ?」
「好きじゃいけないの」
「何で・・・・諦められるまで待ってればいいじゃん」
「好きじゃ・・いけないの」
「何で・・・・?」
「燐は・・・・」
「・・・ん?」
「燐は・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・・先生だったからだよ」
「えっ??」
「・・・・・理科の・・・先生だったから・・・・」
「『燐さん』が・・・?」
「そう・・・・・」
「もう・・・諦めついたからさ」
「そっか・・・・」



 本当は・・心の底で・・貴方を強く想っていた―。

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