《MUMEI》

館内を捜していた、榊が戻って来た。
『用務員さんは…居た?』


『いや、見つからない。あと残るのは、二階の回游水槽だけ…

隠れ場所など無いが、一応見ておくか…

ドーナツ型の回游水槽か!』


ゴボッゴボゴボ…
榊は、背後の水槽の異音に、振り向いた。

『うわっ!!』


『なぁに?』


『駄目だ!見るな、杳子!』
杳子の視線を塞ぐように、引寄せる榊。


『前の水槽を見ろ、泳いでいるはずの魚が、一匹も見えない。

奴等は、皆〜浄化パイプの泡の中にいる。

用務員は、居たよ…殺されて…』


『ええっ!』


『酷い殺され方だ、腹を減らした魚達が、死体の肉を食んでいるんだ。』


フラッ…
『あ…あ』
崩れ落ちそうになる杳子。

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