《MUMEI》
自由人なんだな
竜崎の持っていたビラによると、どうやら学校から20分位の所にあるレストランビルの一角でやっているようだ。俺はそこに着く間に気になっていた事を聞いてみた。
「竜崎さ、なんでさっきの事知ってたんだ?俺話してなかったじゃん?」
「あぁ。おれエスパーだから。内緒だぜ?」
「あっそ。」

誰がそんな嘘に引っ掛かんだよ。

「冷たいなぁ。少しくらい反応してよ。」
「…スゲー。」
思っきり棒読みで反応してやった。
「…もうイイよ。」
竜崎はふて腐れたようだ。
へぇ。こんな表情もするんだ。

「で、なんで?」
俺は話題を戻して聞いた。「…実はね、今朝駅で見たんだよ。沢村君がさっきの子に言い寄られてるとこ。」
「嫌な言い方すんなよ…」「だって事実じゃん。でもさぁ、おれが同じクラスで良かったね〜。じゃなきゃ今頃どうなってたか。」

確かに。女装にはアセったけどそれに救われたのは事実だな。

「じゃあ俺と同じ電車に乗ってたわけ?」
「うん。」
「何で遅刻したんだ?お前2限目から来たろ?」
「おれ、朝ごはん食べてなかったからお腹すいててさ。つい朝マックしちゃった。」
「ついって、お前どんだけ自由人なんだよ。」
「あ!もしかしてあのビル?」

また無視かよ!!

「早く入ろっ!」
竜崎は俺の手を握ってぐいぐい引っ張った。

自分勝手なやつ。

「ワクワクしてきたぁ。」「お前、男だって事絶対バレんじゃねぇぞ。」

そうだ、コイツは男だぞ!
竜崎の空気に飲み込まれそうになっていた自分をたしなめるよう、俺は頭のなかで何度もそう言い聞かせた。

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