《MUMEI》

「……やばい、波だ。一気に欲しくなってきた」
篝が目を閉じて言う。

「最初からその気だったくせに。」
アラタは無機質な自分のベットの上で俯せになり、枕越しに言う。
別の生き物が跨がる感覚が不愉快だった。



アラタの躯には、まだ違和感が残っていた。頭をぶつけたせいか、感覚が鋭敏になっている。
他人が侵してくる、
感情なんて必要なかった
ただ、誰かに縋っていないといけない

「なんの……為に……」
アラタは枕と会話していた。吐息混じりの独り言だ。
「……わ、わりぃ……首、痕……残ってた
陽炎に……罰せられ……」
意識が曖昧で篝は突拍子もない話しをした。後半は呻きに近い。

滑稽で醜い、
もし、この体勢のまま、全てが崩壊したらと考える。
アラタは自分の思考回路に改良の余地があることを自嘲した。

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