《MUMEI》
おかえり
いつの間にか、俊平がNYに旅立って一年が過ぎようとしていた。

季節は巡り、春から夏へと移り変わる−−−。

庭に居るのか、蝉が喧しく鳴いていて、私は自室のパソコンとにらめっこしていた。


*****


瑶子に近況連絡!!

帰国日が決まりました!
来週の水曜日に帰ります。

でも…迎えに来なくていいよ!瑶子は学校とか、自分の予定もあるだろうし。

多分、俺の家族が成田まで迎えに来るだろうから。

心配無用!


俺から、瑶子に会いに行きます。

取り急ぎ、ご連絡まで。


しゅんぺー


*****


瑶子へ。

了解しました!!

その日は、俺も空いてるし、瑶子が授業あるなら学校に行くよ。

その時までには時差ぼけ、治さないとな。


それじゃ、日本で会おう!

俺も楽しみにしてる。


*****


彼の帰国の日にちが決まり、私は何となく落ち着かない日々を過ごしていた。

もうすぐ、会える。

そう考えただけで、胸が踊った。
今更、勉強なんて手につかない。

迎えに行きたいと思ったが、彼のメールを読んで気が変わった。

連絡のメールを読んだ後、すぐに返事をした。

「学校で待ってるから、迎えに来て」、と。

あのカフェテラスは、私達が最初に出会った場所。
再会の地に、一番相応しいと思ったのだ。

私は部屋の窓から空を眺めた。

果てしなく続く、この青空は、遠い地にいるあのひとへ、まっすぐに繋がっている。

近くで蝉が、乾いた声でいつまでも鳴いていた−−−。


もしかしたら、あの時が、一番幸せだったのかもしれない。
本当に久しぶりに会える俊平を、ただ待ち侘びていた、あの日々が。

ただ待つだけで、良かったから。

自分から、歩き出すことを、しなくて良かったから−−−。



運命の、あの日が音もなく、私のもとに忍び寄っていることも知らずに、ただ、俊平の帰りを待っていた。



そして、帰国日−−−。

いつものように、学校をサボってぶらぶら時間を潰して家に帰ると、パソコンに俊平からメールが届いていた。


*****


寂しがり屋のヨーコへ。


無事帰還しました〜!

いや〜、やっぱりアメリカと日本は遠いね。長い旅路でした。


こんなに俺達は遠く離れてるんだなって、今さら実感…。


今、酷い時差ぼけ中。
そんな俺に、家族は困惑中。

自分で何言ってるのか、全然分かってまセン。

今日はゆっくり休ませて貰って、あさってに備えます。

迎えに行くから、覚悟しとけよ!!


俊平より愛を込めて。


*****

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