《MUMEI》
バイキングに来た意味あんの?
「いらっしゃいませ。」
店に入ると店員が声をかけてきた。
「二名様ですね?こちらへどうぞ。」
そう言うと俺らを窓際の席へ案内した。
「うわぁ!ケーキ沢山ある〜迷っちゃうねぇ!」
「そりゃ…バイキングだからな。」
俺は店内に充満する甘い匂いに胸やけをおぼえた。

「私取ってくるね〜」
「え?あ…うん。」

そうだ、俺ら今カップルだったっけ。

竜崎が戻って来る間、俺は店内を見回していた。
やはり女の子がほとんどだ。広告効果もあってかカップルもチラホラいるみたいだが。

どうやら学校の連中はいないみたいだな。こんな所見られたらどんな噂がたつやら…でもマジ竜崎の奴、どう見たって女だよなぁ。

ケーキを選んでいる竜崎をじっと眺める。

背ぇちっこいし華奢だし。脚細いなぁ…胸は……
っておい!何考えてんだ俺!?胸なんかあるわけねぇだろ、男なんだし。

俺は思わず目を背けた。

「おまたせっ。すごい迷っちゃった。」
プリンが山盛りに乗せられた皿を手にして竜崎が戻ってきた。
「お前、何だよソレ?何でプリンばっかなわけ?ここバイキングだぜ?」
「いやぁ〜迷っちゃうと結局好物だけしか目に入んなくなるんだよ。変わってるでしょ。」

変わり過ぎだろ!

「でも色んな種類あるし。沢村君も食べる?」
「いらね。」
「そっか…嫌いだったね甘いもの」

そんな哀しそうな顔すんなよ…あぁ!もう!!

「ひ、一つ位なら…」
「食べる!?」
竜崎の顔が輝く。
「じゃあコレ食べてみて。はいア〜ン」
「ア〜ン。って出来るか!」
「ハハッ!ノリツッコミしたぁ!!」
「うっせぇ!お前が…っ」「はい、どうぞ。」
竜崎はそう言って俺にプリンとスプーンを手渡した。
まったく、どこまでも自分のペースだな。

俺は呆れながらも、身体が熱くなっているのに気付いていた。

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