《MUMEI》
虐め【2】
 しばらく雨の中を濡
れながら走り続け、優
都はある公園で立ち止
まった。

「…ここ…」

 この公園には、色々
と思い出があった。

 初めて飛夏羽と出
会ったのが、この公園
である事。それが、優
都の心に深く焼き付い
たのであろう。

 二人は出会ってから
直ぐに意気投合し、沢
山遊んだり、お互いに
悩みがあれば、打ち明
け合ったりする仲にま
でなった。
だけどもう、飛夏羽の
温もりが自分には残っ
ていない事を、優都は
知っていた。

「…帰ろう。」

 公園を離れようとす
ると、前から誰かが歩
いてきた。
その人は優都を見つけ
ると、優都の所へ走っ
てきて、傘を渡した。

「其処までだけど…
使って。風邪引いちゃ
うよ。」

 優都に傘を渡したの
は飛夏羽だった。

「…ありがと。」

優都は、傘を受け取る
と、そのまま帰ろうと
した。
公園の入り口まで来て
から、優都は急に振り
向いた。

「飛夏羽は如何する
の?」
「私は…もう少しして
から帰るよ。」
「それじゃあ飛夏羽が
風邪引いちゃうじゃ
ん…一緒に帰ろう。」

 優都は傘を差し、飛
夏羽の目の前に手を差
し出した。
優都の差し出した手に
は、温かい何かが零れ
落ちてきた。
雨じゃない…飛夏羽の
涙だった。

「何でこんなに…優し
くするの?」
「何でって…」

 飛夏羽は泣きながら
思わぬ事を口にした。

「私、優都の事ずっと
好きだったんだよ?…
大好きだった…」

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