《MUMEI》
虐め【3】
 優都は傘を落として
飛夏羽を抱き締めた。

「俺だって好きだった
よ…でも俺…飛夏羽を
守れた事無かった
よ?」
「そんな事無いよ…傍
に居てくれただけで…
嬉しかった…」

 飛夏羽は唇を震わせ
ながら泣いていた。

 優都は飛夏羽の涙を
隠すようにして、更に
強く、飛夏羽を抱き締
めた。

「…お願い優都。虐め
られても良いから…傍
に居させて…」
「…幼稚園の頃から
ずっとだもんね…何時
終わるか分からないん
だよ?俺なんかと幼馴
染になっちゃったか
ら…無理して傍に居な
くても良いんだよ?」
「優都は何にも悪くな
いよ!…それに…無理
なんかしてない。私が
傍に居たいから…傍に
居るだけだよ…」

 飛夏羽は優しい表情
で笑って見せた。

 優都も笑って飛夏羽
の髪の雫を指で拭っ
た。

「…帰ろうか。」

 二人は傘を差し、手
を握って優都の家へと
向かった。

 飛夏羽と優都の家
は、3件離れていた。
帰り道、こんな落とし
穴が待ち受けていると
も知らずに、楽しそう
に笑いながら優都の家
へと向かって行った。

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