《MUMEI》
虐め【4】
家に入ると、優都は
飛夏羽を自分の部屋に
案内し、他の部屋へ
行った。
「…優都の部屋…綺麗
だなぁ。私の部屋より
綺麗かも…」
飛夏羽は自分の部屋
と優都の部屋を見比べ
て、笑っていた。
しばらくして、優都
が部屋に入って来た。
優都は首にタオルを
掛けていて、既に私服
に着替えていた。
「これ使いな。」
優都は飛夏羽にタオ
ルを渡した。
「ありがとう。」
飛夏羽は濡れた髪を
タオルで優しく拭い
た。
「…ねぇ、優都。」
「何?」
「さっき、私の事守れ
なかったって言ってた
でしょ?そんな事絶対
無いからね。…覚えて
る?お母さんが出て
行った時の事。」
飛夏羽が幼い頃に、
父親は死に、母親は家
を出て行ってしまった
のだ。
兄は居たが、兄は母
親に連れて行かれたと
言う。
一人取り残された飛
夏羽は泣きながら優都
の家に駆け込んでいっ
た。
「その時にね、僕が飛
夏羽の事守ってあげる
から。だから飛夏羽は
ここに居てって言って
くれたんだよ。」
飛夏羽は思った。こ
の時初めて優都の事
を、友人関係で好きな
のではなく、恋愛関係
で好きだと思い始めた
のは。
「そうだったんだっ
け?小さい時の頃の記
憶なんて全然無い
や…」
「あはは!優都の事だ
からそう言うと思って
たんだぁ。」
「何それ。」
優都は優しく微笑ん
だ。優都の笑顔を見
て、飛夏羽も釣られて
笑顔になっていた。
「優都、やっと笑った
ね。」
「え?」
「笑顔って、人を幸せ
にする不思議な力があ
ると思うんだ。」
飛夏羽に依ると、優
都の笑顔には周りを幸
せにする力以外にも、
人の心を癒す力も兼ね
備えられていると言
う。
「だから私も、優都の
笑顔に何時も助けられ
て来た様なものだ
よ。」
「ありがとっ。」
「うんっ。」
それから、あっと言
う間に時間が経って
いった。
外を見てみると、雨
は上がっていた。
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