《MUMEI》

せっかく手に入れた武器はすべて失くなってしまった。
残っているのはわずかな金だけだ。
こんなはした金では命を守ることはできそうにない。
ユウゴがこれからどうするべきかと考えを巡らせていると、ドアの向こうから足音が近づいてきた。
反射的にユウゴは立ち上がり、音をたてないように気をつけながらドアの横に立った。
そして、いつでも殴り掛かれるように拳を握って構える。
すぐそこで足音がピタリと止まった。
ドアがゆっくりと開いていく。
同時にユウゴは拳を部屋に入りかけた人物に向かって思いきり振った。
ガツンと鈍い音がして男が後方へと飛んでいく。
男が手に持っていたらしい盆が落ち、そこに乗せられていたコップが床に叩きつけられ、派手な音をたてて割れた。
ユウゴはすぐさまそのコップの破片を手に取ると、仰向けに倒れて顔を押さえている男の上に体重をかけて乗った。
男はようやくユウゴの行動に気付いたらしく、体を動かしてユウゴを振り落とそうとする。
ユウゴは落とされないように体に力を入れながら、手に持った破片を男の右目へと近づけた。
コップの破片といえど、その先はナイフのように尖っており、目に近づけられると相当な恐怖を感じるだろう。

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