《MUMEI》

言いにくそうに目を泳がせている母さん。


「ヤバい……病気…なんだな?」


そう念を押す俺に、
母さんは務めて明るい声を出した。


「大丈夫よ。

父さんの病気は治る病気だから。」


「ふーん……。」


俺はこれ以上詮索しなかった。


いや、出来なかった。


だって母さんの顔はあからさまに無理していたから。


必死に俺に心配掛けないように、
無理矢理笑顔を作っていたから。


ヤバい病気なんだな。


口には出さず、
心の中でそう思うことにした。


俺だって、
母さんに心配掛けたく無かったから。


「それじゃ、言って来る!!」


「え?

こんな朝早くから何処へ行くの?」


俺はチッチッと指を振った。


「忘れてもらっちゃ困るなあ。

朝練すんだよ!」


「フフッそうだったわね。」


やっと本当に笑った。


「うん。

じゃ、行ってきま〜す!」


「はい、行ってらっしゃい。

頑張ってね。」


「おう!」


俺はまだ薄暗い道の中へと飛び出して行った。

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